第90回ミュージアム講座「太平洋の小さな島国からみる世界~ヴァヌアツをフィールドとして」を開催しました。

 本日午後、松江スティックビルにて、第90回ミュージアム講座「太平洋の小さな島国からみる世界~ヴァヌアツをフィールドとして」を開催しました。

 この講座は、平成28年度島根大学ミュージアム市民講座第1ステージ「世界を股に掛ける!島大の調査研究(フィールドワーク)」(兼:まつえ市民大学連携講座)の最終回になります。

 今回の講師は、文化人類学をご専門にされている福井栄二郎先生(島根大学法文学部准教授)でした。

 まず最初に、文化人類学とはどういった学問なのかについて紹介がありました。世界にはたくさんの人々が暮らしています。そういった世界の諸民族を対象にして、文化・社会の多様性と普遍性を明らかにしていく学問が文化人類学になります。

 そして、世界の民族文化を知るためには、現地へ行ってみること、つまりフィールドワークが必要になります。さらに、「参与観察」、すなわち何年も現地に滞在し、地域の人々と衣食住をともにし、言葉を覚え、信頼関係を作ることが、文化人類学フィールドワークの大事なところのようです。

 次に、福井先生が永年にわたってフィールドにされているヴァヌアツについての紹介がありました。ヴァヌアツは、太平洋にある小さな島国で、約80の島からなります。人口は25万人ほどですが、言語は100もあるそうです。福井先生は、このうち、人口900人ほどのアネイチュム島に滞在し、ご自分で家まで建てられて、調査をしてこられました。

 アネイチュム島では、基本はタロイモなどを主食にした半ば自給自足的な暮しがなされてきました。こうした伝統的でのどかな生活が営まれているアネイチュム島ですが、近年は、オーストラリアなどから年間70回も大型観光クルーズ船が来航するようになりました。1度に2000人もの観光客がどっとやってきて、島の暮しは一変してしまいました。観光客の消費によって、島に現金収入がもたらされるというメリットがある反面、店からモノがなくなったり、島民が忙しくなり、畑・家・教会の仕事がおろそかになったりするなどの問題も起こっているようです。
 
 こうしたグローバル化によるインパクトの大きさによって、現地の文化が混乱するといった負の側面をみておくことも、文化人類学の重要な仕事であるとのことでした。

 参加した皆さまは、あまり馴染みのない太平洋の島国での生活について興味深く聴講され、講演後はたくさんの質問もなされました。

 平成28年度島根大学ミュージアム市民講座第1ステージ「世界を股に掛ける!島大の調査研究(フィールドワーク)」は、今回で終了します。10月からは別のシリーズを予定しています。ひきつづきよろしくお願い致します。

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